腟内フローラと、不妊リスク・早産リスクについてのお話です
医療法人愛和会 愛和病院 産婦人科医・医学博士 山田 卓博(たくひろ)医師
国立浜松医科大学医学科卒
産婦人科クリニックに勤務しながら、精力的に妊活セミナーを実施。
セミナー参加者の満足度は98%以上に達している。
「腸内フローラ」という言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。
近年、“腸内環境”が様々なことに関連していて、“腸内環境”を整えることが健康維持に重要であることがわかってきました。
腸内には、一千兆個以上もの細菌がいると言われ、腸の壁にびっしりと、まるでお花畑(フローラ)のように住んでいることから「腸内フローラ」と呼ばれるようになりました。
腸内環境が悪くなると、便秘などになるだけでなく、体の免疫機能が落ちて感染症にかかりやすくなったり、脳内ホルモンのバランスまで崩れるとも言われています。
腸内環境を整えてくれる善玉菌が、ビフィズス菌やラクトバチルス菌などの乳酸菌になります。
このビフィズス菌とラクトバチルス菌という乳酸菌が、体の免疫系、神経系、内分泌系などの状態を正常に維持することに貢献しており、私たちの健康状態は乳酸菌によって維持されていると言っても過言ではありません。
そして近年、婦人科領域でも乳酸菌が注目されています。
腸管内だけではなく、腟内にも細菌叢が存在し、それを「腟内フローラ」と言います。
「腟内フローラ」を正常に保ってくれる、最も重要な乳酸菌が、先ほどのラクトバチルス菌です。「デーデルライン桿菌(かんきん)」とも呼ばれます。
健康な膣内フローラ
ラクトバチルス菌(デーデルライン桿菌)は、腟内のグリコーゲンを分解して乳酸をつくり、腟内をpH3.5〜4.5の弱酸性に保つことで、外部からの有害細菌の侵入や繁殖を防いでいます。
腟内でこのラクトバチルス菌(デーデルライン桿菌)が減少してしまうと、良好な腟内環境が維持できなくなり、様々な有害細菌の繁殖を許すこととなり、そのような状態を「細菌性腟症」と言います。
「細菌性腟症」は、オリモノの異常や悪臭の原因であることもありますが、無症状のことも多いため、特に症状がないからといって心配ないとは限りません。増殖した悪玉菌が上行して子宮内膜炎を起こしたり、さらに上行すると卵管炎・骨盤腹膜炎が起こる危険性があります。
さらに注目すべきことは、腟内フローラの悪化は、不妊と産科の領域でも重大な問題を引き起こします。
- 膣内フローラの悪化による不妊リスクについて
腟と子宮はつながっているため、腟内フローラ(細菌叢)は子宮内環境とも密接に関わってきます。
不妊症の女性の約半数の人で、ラクトバチルス菌(デーデルライン桿菌)が少なく、ラクトバチルス菌(デーデルライン桿菌)が多い女性は、少ない女性に比べて有意に妊娠率が高かったことが日本の研究で報告されています。 - 膣内フローラの悪化による早産リスクについて
現在、20人に1人の赤ちゃんが早産で生まれ、7〜8人に1人の妊婦さんが切迫早産になり、早産や切迫早産はどの方にも起こり得る可能性があります。
その最大の原因が絨毛膜羊膜炎となります。
腟内フローラが悪化したことで病原性細菌が上行して子宮内に侵入し、絨毛膜羊膜炎を起こし、早産や切迫早産の原因となるため、腟内環境は非常に重要になります。
以上のことから、妊娠・出産を希望されている女性にとって、ラクトバチルス菌(デーデルライン桿菌)が豊富な腟内環境を保つことは非常に重要になります。
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